どんな家でも完成して入居した時が最もうれしい瞬間です。でもそこを家のピークにしてしまっていいのでしょうか?僕たちはそれではいけないと考えています。僕達が考える家づくりで最も大切な考え方は
35年後に振り返って
「この家に住んで良かった」
と思える家づくり
です。これを達成するために大切なポイントがあります。
1.表面的なデザインはシンプルに、素材を生かし、形や空間を工夫する事で飽きの来ないデザインにする
2-1.建てた後では替えられない部分を優先してお金をかける(平屋・間取り)
2-2.建てた後では替えられない部分を優先してお金をかける(断熱気密)
3.家で使うエネルギーはできるだけ自家発電(太陽光発電)
4.壊れたら取り換え不能な機器を採用しない
5.住んでいて楽しい家にする
1.表面的なデザインはシンプルに、素材を生かし、形や空間を工夫する事で飽きの来ないデザインにする
流行りを追って家をデザインする事は、流行りの服を買う事と同じです。服は高くても数万円、買ってから数年たって恥ずかしくて着られなくなったら買い替えればいい。でも家のデザインは簡単に変えられません。
住宅メーカーは服飾業界と同じようにデザインの流行を作り、家を売りやすくします。○○スタイル○○風というのは流行りものです。流行りものはいつか必ず廃(すた)れます。
この家は○○風ではありません。天井の無垢の木の梁(はり)の色、床の木の色、サッシや建具の金属色などを生かしています。
今から30年前に建てたお家が周囲にありませんか?
流行りを追ったデザインの家は30年後、その家と同じイメージになるかもしれません。
その時はみんな着ているから何も疑問を持たずに着ていたけど、5年後にクローゼットの中で見つけた時に「。。。」と思ってしまうのと同じです。
飽きの来ないデザインに大切な事
・表面の色や柄はシンプルにする(クロスで遊びすぎない)
・素材の色を生かす(アイアンや無垢の木)
・外観は自然にある素材の色を使う
・間取りや形のバランスで勝負する
・
2-1.建てたあとでは替えられない部分に優先してお金をかける(間取り・1階主寝室)
一度建てたら間取りを大きく変更するのは不可能に近いでしょう。でも建てる前の図面上では間取りは自由に変更可能です。
現状の家族形態での使いやすさから、20年後子供が独立した後の使いやすさ、35年後仕事をリタイヤ後足腰が悪くなった時の使いやすさ、全部を想定して間取りを作りましょう。
○設計士が「家事」や「子育て」をしている会社を選ぶ
設計士はブラックな働き方が多く、「朝早く出て子供が寝静まってから帰る。日曜日は疲れを取る為にごろごろ」という方が多いです。そんな日常では家事をすることはほとんどできません。家事ラクや子育てしやすい間取りはそれを経験している設計士にしか作れません。なぜなら想像できないからです。
・雨の日に室内で洗濯物を干すと何時間くらいで乾く?
・家族4人分の洗濯物を干すために必要なスペースはどれくらい?
・高断熱の家はパントリーにジャガイモを入れると直ぐに芽が出てしまうの知ってる?
・スティック型、キャニスター型、ロボット掃除機、それぞれの特徴とどこに置けば使いやすいか考えたことある?
○間取りを選んではいけない
間取りは10万通り以上あります。
「1000の間取りから選べます」という謳い文句がありますが、「1/100しか選べません」と同じこと。しかも反転しただけの間取りも含まれていると聞きました。
本当に満足のいく、しかも将来にわたって後悔しない間取りにたどり着く為には1000の間取りからの選択ではなく、ご要望や僕達の知識を、地域や方位、敷地の形の中でどう組み合わせていくか、しか方法が無いと言っていいでしょう。
僕達は設計のプロである3名の1級建築士と、生活のプロである数名の女性スタッフが関わりながら日々間取りを作っています。
○間取りを諦めない
「希望の間取りを何となくイメージしていても提案してもらった間取りがしっくりこない」それを続けている間にタイムリミット(例えば補助金絡みの期限、子供が小学校に上がる前に入居するための着工期限など)を迎え、納得いかない間取りで諦めて建ててしまう。
この仕事をしているとよく聞くエピソードです。そうならない為にも、粘り強く設計士や営業に修正を依頼しましょう。
僕達は、納得いただける間取りを、少しでも短時間でご提案する方法を日々考えています。
○1階に主寝室を設ける
「平屋は屋根と基礎の面積が大きくなるから高いよ」平屋が得意でない住宅会社が良く言う言葉です。確かにそうなのですが、2階建てが安くなるのは1階と2階の面積が同じ「総二階建て」の時だけ。
「総二階建て」すると寝室、子供部屋、クローゼットは全部2階。
35年後に足腰が弱くなって階段上れなくなったらどうしますか?
僕の実家も多聞に漏れず、1階に寝室を500万円以上かけて増築しました。
平屋と2階建の話
2-2.建てた後では替えられない部分に優先してお金をかける(断熱気密)
○外壁の色や室内のクロスなどは、15~20年経過するとメンテナンスで色を変えたりクロスを張り替えたりできます。
でも断熱性能や気密性能は後から変える事は非常に困難です。
例:35年前に建てた家が寒いので家中のサッシを断熱サッシに変えたら、300万円もかかった。でも壁の中の断熱材はそのままなので、300万円かけても寒いまま。
例:35年前に建てた家を売ろうと思ったけど、寒いし隙間風だらけなので建物にほとんど価値が付かなかった。それどころか、解体しないと土地を売れない為、マイナスになってしまった。
僕の実家も冬は室内でも氷点下になる事があります。この仕事をしているにもかかわらず、解決策は見つかりません。
断熱気密の話
3.家で使うエネルギーはできるだけ自家発電(太陽光発電)
最近電気代が上がっています。下の表を見ると2010年から2019年の9年間で20%近く上昇しています。2022.4現在は30円以上まで上がる事が予測されています。
日本はエネルギー資源が乏しい国ですが、太陽光は全世界ある程度平等に与えられている資源です。今後のエネルギー価格のさらなる上昇に備え、太陽光発電はできるだけ搭載しましょう。
その中でも、僕達がおすすめしているのは「建て得」初期費用は実質無料(弊社工事費、申請費が15万円税別かかります)で17kw前後まで搭載可能。この大きさの太陽光パネルは平屋でしか実現できません。「一般的な家で消費する電力は6~8kwの太陽光でまかなえるからそんなに大きなパネルは必要ない。」という声も聞こえてきそうですが、10年後、電気自動車を使い始めたら足りなくなります。
将来の電気自動車普及に備えて、「今しかないお得な制度」に乗っかりましょう!
4.壊れたら取り換え不能な機器を採用しない
難しい冷暖房のシステムが世の中に溢れています。確かにお金をかけて高級な冷暖房システムを入れると快適かもしれません。でも、機械の寿命は長くても20年です。エアコンを想像してもらうと20年は持ちません。床暖房も同様です。
20年後に複雑な冷暖房システムが壊れた時に取り換えができなかったら、そのシステムはただのゴミです。
とにかくシンプルに、複雑なシステムを導入しない事。これも非常に重要なポイントです。
5.住んでいて楽しい家にする
人生の半分は家で過ごします。その家が楽しい家である事は実はすごく大切です。楽しい家にする方法は、いろいろあります。
1.コの字のやL字の間取りで遊べる中庭を作る
2.梁を見せる工法を採用して、ハンモックやブランコを設置する
3.家事ラクな間取りや洗濯物をストレスなく乾かせる家にして、家でゆっくり遊べる時間を作る
4.ロフトベッドを作って子供にとって自分だけの空間を作る
5.書斎という名の自分だけの空間を作る
6.家事の合間に一息つける空間をランドリールームの一角に作る
これらは性能やデザインとは別の観点で、家づくりのご要望にもあまり上がってこない内容です。でも、自分にとって「楽しい」と思えるものを無理をしない範囲で家に取り入れておくと、想像以上に人生を豊かにしてくれると思います。
最後に
これらは個人的な考えも多く含んでいますが、営業的に仕事が欲しいから書いている文章ではありません。多くの家づくりに携わる中でわかってきた事です。それを皆さんにお伝えする事で、「35年後に振り返った時にこの家に住んで良かった」と思える方が少しでも増えると嬉しいです。
OTEC 代表 一級建築士 太田竜平